最近読んだ本

  • フォークナー / 響きと怒り
     読みにくい!特に上巻。まぁ意識の流れ技法を使った小説はたいがい読みにくいんですが、ことのこの作品は語り手がメンヘラっていう設定のせいでよけいに???な感じです。じゃあ、ダメな小説家というとさにあらず。世界を一つの有機的な生命体のようにとらえる独特の視点からの描写が次々に登場して、はっとさせられます。さらにそういった部分的な素晴らしさだけでなく、読み進めていくと登場人物の情感豊かに浮かび上がってくる静かな没落の物語は、閉塞感をともなって心に迫ってきます。裏切られていることをうすうす感じながら、それを正面から受け止めることができなかったり、守る価値がないことを知りながら守ることしかできない行動を人間はすることがあるわけです。そのような人間の過ちと不完全さへの著者の深い愛に強い共感を感じさせる読後感は強力です。
  • ポール・オースター / 空腹の技法
     オースターの批評、インタビューで構成された一冊。特にフランスの詩についての批評は批評として優れているだけでなく、ひとつの文学作品として成立しています。またインタビュー部分は、彼の既読作品をもう一度読みたくなる内容でした。
  • 奥田 英朗 / 無理
     郊外の町を舞台に、いろいろな人が厄介ごとに巻き込まれて、最終的に変な形でそれが交錯するお話。まぁある種のステレオタイプな郊外のイメージをありそうありそうとリアクションしつつ読むのが正解なんでしょう。ただまぁなんつーかな。微妙に差別っぽいというか、都会暮らしの人間が田舎を見下しているようなフレーバーを感じますね。登場人物ごとにストーリーがあるんですが、そのクオリティーにバラつきがありますね。