最近聴いた音楽

  • Dynazty / Titanic Mass
     初期はロックンロールよりのハードロックだったんですが、徐々にHM/HRによせてきたサウンドになっています。しかしメタルの要素が強くなってくると、彼らのシンプルさが逆にデメリットになっているように感じます。変拍子も抑えめで、シンプルなコード進行(実際はそれほどシンプルでもないんですが、シンプルに聴こえます)、キャッチーなメロディーという感じで、トータルで聴くとなんだかDGMから演奏のおいしい部分を全部取り除いた出がらしみたいに聴こえます。今や世の中のメタルバンドのサウンドやアレンジはかなり複雑化しているので、私たちの耳のスタンダードも変わっていますしね。メロディーセンスは悪くないんですが、ほかの部分が予定調和的なのでけっこうすぐ飽きてしまうんですよね。これがロックンロールだと、シンプルなサウンドはむしろカッコよさなんですが、メタルだと物足りないになっちゃうんですよね。残念なところです。悪い音楽じゃないんですがね。

  • Metal Allegiance / Metal Allegiance
     そうそうたるメンツが集まったプロジェクトですが、演奏はさすがです。ポートノイのドラムの気持ちのいいグルーブはもちろんですが、チューンダウンしているにもかかわらず切れ味のいいタイトなリフワークもアルバムのクオリティをあげています。一方で一曲一曲Voが変わるため、アルバムトータルでの一貫性などはあまり感じることはできません。基本的にはかなりヘヴィな雰囲気で、それほどメロディアスというわけではありませんが、不思議ととっつきにくさはなくストレートな魅力があります。ところどころテスタメントだったり、Lamb Of Godだったりするのはご愛敬。一方で、プロジェクトならではのにぎやかな雰囲気もあり、そのなかでしっかりクオリティコントロールされているアルバムでした。ただ、フィリップ・アンセルモの歌が、パンテラの時とかに比べるとずいぶんメロディアスさを失っていることに驚きました。彼の歌はアグレッシブさとキャッチーさが共存していることが魅力だったのに・・・。





  • Santana / IV
     サンタナはここ数作、かなりマジに創作に取り組んでいる雰囲気がありますが、新作からは本格的に努力が結果に結びつきつつあるのを感じることができます。サンタナ自身が自分に何が望まれているのか、ラテンロックの魅力は何なのか、ここ数作模索している感じでしたが、いよいよ努力が結果に結びつきつつあることを感じます。新作は70年代のメンバーの再結集作ということですが、リズムアレンジもここ数作の中では非常にハマっていますし、豊かな表現力のあるギターをサンタナからもニール・ショーンからも感じることができます。70年代の作品の焼き直しというよりは、現代の音楽シーンもみすえつつ、過去の作品のノスタルジーも感じることができる作品という感じで、適切なバランス感覚だと思います。70年代の焼き直しを求める声は大きいでしょうが、実際にそういう作品を作るとなんだかショボいことになることが多いということをサンタナは長いキャリアの中でよくわかっていると思います。時計の針は巻き戻せません。これでいいんです。私は素晴らしい作品だと感じました。
  • Almanac / Tsar
     ストリングスやホーンなどのオーケストラセクションのアレンジにはアルバムタイトルをイメージさせるスラブ系のクラシック音楽の影響が感じられます。荘厳で威厳を感じるオーケストレーションに、ヨーロピアンなメタルリフ、フラッシーなシュレッドが組み合わさっています。全体的な雰囲気はヨーロピアンでありメロディアスであるにも関わらず、スピードや泣きの要素をあまり感じない、オリジナルなメタルが展開されています。このクオリティの高さは元RAGEのギタリストのヴィクター・スモールスキによるもので、多彩な音楽ジャンルの知識、理論の知識、テクニックが高い次元でバランスしているからこそ創り出すことができる音楽です。ワーミーペダルやスイッチングプレイのセンスも絶妙で、久々にギター成分の濃厚なアルバムを聴くことができました。ひっじょーに満足です。