最近聴いた音楽

  • Maragold /Maragold
     私が大好きなギタリスト、グレッグ・ハウの新しいプロジェクト、Maragoldのファーストアルバムです。これがすばらしいでき、ブルースロックにファンクやR&B、フュージョンのフレイバーをまぶしたサウンドで、彼の音楽的な懐の深さを味わうことができます。しかも、アレンジはとてもシンプルで基本的にはVo、G、B、Dのフォーピースのバンドで再現できるサウンドになっていて、ギターソロやベースソロもしっかりフィーチャーされています。しなやかでシャープなカッティングから流れるようなフレーズワークのソロまで、楽しむことができます。またヴォーカルのミーガン・クラウスがすばらしい。スモーキー、ソウルフル、パワフルなヴォーカルは強力なバッキングに負けません。時々Mr.Bigっぽい時はありますが、Mr.Bigにはないスタリッシュな雰囲気がこのバンドのオリジナリティだと思います。とにかく今後の展開に大いに期待したいです。



  • Judas Priest / Redeemer Of Souls
     Painkillerというメタルの金字塔といってもいい名作を発表して以降、クオリティという観点からはまともなアルバムは一枚も出していないJudas Priestですが、新作もひどい作品です。リフやメロディはそこそこカッコよさげなのに、引っ込んだ音でのほほんとした演奏が音楽からスリルや熱気を完全に奪い去っています。しかも悪質なのが時々過去の名作を彷彿させる曲の流れやイントロなどをちょいちょいつっこんでくるために、黄金期のプリーストがあんなにカッコよくキメたことが、今やるとこんなにグダグダになるのか!と寂寥感あふれる驚きを感じることになります。晩節を汚すってこういうことだよな。
  • Babymetal / Babymetal
     ひとことで言うとイロモノです。「キュートな女の子がメタルをやると意外性があっていいんじゃない?」という、おっさん臭さとオタ臭さのふたつのかぐわしさが漂うプロジェクトな訳ですが、こういう金になることが高確率で予測できるイロモノというのは、金にものを言わせて最高水準の才能をかき集めることができるというアドバンテージがあります。その証拠にアルバムのクオリティが異常に高い。作曲、アレンジ、演奏、ダンス、ギャグのスベり加減と、まったくスキを感じさせてくれません。あ、いや一個だけひっかかったことがあります。それは4曲目の" いいね!”なんですが、この曲だけクオリティが低い。メロディーはあきらかにJ-Popに寄せた感じになっていますし、アレンジもメタルの有機的なヘヴィネスを感じることができません。たぶんメタル好きにとってはこの4曲目を超えられるかがハードルになるように思います。私は正直、4曲目だけスキップしちゃいます。ちなみに4曲目をスキップした次の5曲目の“紅月”はモロX Japanオマージュの曲なので、おそらくX Japanを通ってきたであろう多くの日本のメタルファン(Xジャンプとかしてた or フェルナンデスのモッキンバードにポスターカラーで落書き)は、青臭かった自分を思い出してちょっぴり恥ずかしい気持ちで曲を聴くことになるはずです。とはいえ、この手の思いつきがモチベーションになったプロジェクトは続けることが難しいんですよね。曲の中にしこむダジャレやあるあるネタもつきてきますし、キュートな女の子とメタルという組み合わせにリスナーが飽きてくるのも早いはずです。そうなると選択肢は基本的には二つで、ひとつはよりメタルファンにアピールできるよう、メタルとしてクオリティをあげるか、あるいはよりポピュラリティーを獲得できるよう非メタルのリスナーにアピールできる作品を作るかな訳ですが、前者はメタルファンは喜ぶけどターゲットとなるマーケット自体が小さくなってしまいますし、後者はメタルファンから怒りを買いかねないため、セールスがこけると救いようがなくなると考えると、適当に盛り上がったら素早く撤退するのが気持ちがいい売り方だと思います。今後あまり残念な気持ちにならないような形で楽しませてくれるといいなと思いました。


  • Overkill / White Devil Armory
     コンスタントに充実したスラッシュメタルを届けてくれるOverkillですが、新作も安定のクオリティです。カミソリのようにシャープなリフをこれでもかと聴くことができます。さらにそこに乗るヒステリックなBobby “Blitz” Ellsworthのヴォーカルはまったく衰えを知りません。こういうのを現役感っていうんだよ>judas Priest。アルバムを通してまったくヴォールテージが下がることがありません。カッコよすぎです。満足です。