最近聴いた音楽

  • Pretty Maids / Motherland
    いつのまにかPretty Maidsもかなりのキャリアをほこるバンドになりました。かつてのバンドをしっている私にとっては、ロニー・アトキンスがいつのまにかすごいおじいちゃんみたいなルックスになってしまい、ケン・ハマーはこれでもかというほど太ってしまい時の流れの残酷さを感じます。彼らは正統派メタルとストリートフレイバーを感じるロックンロールの間の比較的メタル寄りのポジショニングにあったバンドなわけですが、新作ではあまりツーバスがドコドコいうようなタイプの楽曲はなくなってしまいました。変拍子やこったコード進行もありませんし、そもそも彼らはアレンジ的にこったことはあまりしませんし、ライブでは安定した演奏を聴かせるものの、テクニカルな演奏を魅力とするバンドではありません。そんなわけで、もともと引き出しはそれほど多いわけではなく、楽曲にバリエーションがあったバンドではないので、やれることはかなり減ってしまった感はありますが、自分たちにやれることのなかでベストのものをつくろうという意欲をここ最近の彼らの作品からは強く感じます。新作もあふれでるような創造性はありませんが、堅実に曲のクオリティを高めようという姿勢を感じることができます。オーソドックスな楽曲の質を高める方法としては、やはりメロディの存在は大きく、新作はかなりそこに力が入っています。“Sad To See You Suffer”などは彼らの哀愁のあるキャッチーなメロディーを堪能できる佳曲で、アルバムを聴いた後散歩をしているときなどにふとメロディーが口をついてでてきます。しかも、ロニーの声はかすれ具合が実にカッコよく、メロディーが強調されつつも太いギターサウンドにばっちりハマています。かつてほどのパワーもスピードもないという制約の中で、彼らの魅力が最大限生かされるような方向でつくられら作品は、まさにベテランの味わいでした。

  • Sebastian Bach / Kicking And Screaming
    今回は声のカッコいいヴォーカリストが歌う作品ばかりになりました。Skid Rowのヴォーカルをだったセバスチャン・バック(通称バズ)のアルバムです。とはいえリリースは2年ほど前なので、いまさら聴いたという感じです。私はSkid Rowの“The Threat”という曲が大好きでした。なにがいいって、曲全体からかもしだされるアメリカンな雰囲気がめちゃくちゃカッコいいのです。しかしSkid Rowを抜けてからバズの活動には疑問を感じるというか、アクセスしづらい感じでした。というのも活動のフィールドがメタル界隈ではなく、ミュージカルになってしまったからです。それ以降、時々思い出したようにYouTubeで聴くことはあったものの、アルバムという単位で彼の作品に接することはありませんでした。しかし、今、久しぶりに彼のアルバムを聴くと、ヴォーカリストとしての彼はまったく衰えを感じません。楽曲にもアメリカンなフレイバーが強く、そこにSkid Rowの残滓を感じることができます。しかし、なにより演奏にケミストリーがないことがものたりないです。Skid Rowは演奏もヴォーカルもみんなが前へ前へ出ていこうというエネルギーに満ちていて、そのぶつかり具合というか、ぐちゃっとした乱雑な感じがカッコよかったのです。それが彼がソロアルバムとなると、演奏が分をわきまえているというか、微妙にひっこんだポジションをとっているために、彼のヴォーカルが作り出す世界観のなかではなんだか物足りません。楽曲はヘヴィでカッコいいし、ヴォーカルもかつてほどではないにせよ、十分にキレているので、ほんとに演奏だけがもったいない感じでした。とはいえバズが抜けた後のSkid Rowは出がらしって感じだったので、再結成してもロクなことにならないと思います。ほんとにもったいない。