COOLPIX S8100を購入

 画素数と価格ぐらいしか差別化できるポイントがない、さびしい状況にあったコンパクトデジカメですが、裏面照射型CMOSの登場で状況に変化がでてきたように感じます。そんなわけで、裏面照射型CMOSを搭載したカメラをぜひとも欲しいというわけでCOOLPIX S8100を購入しました。

f:id:sn1nsmr:20110220104355j:image

f:id:sn1nsmr:20110220104510j:image

裏面照射型CMOSと従来のCCDとの違いはデータ読み出し速度にあります。裏面照射型CMOSはこれまでのCCDに比べはるるかに高速でデータの読み出しが可能です。それゆえいままでなら何十万もする報道向け一眼レフを買わなければムリだった120コマ/秒の連写がコンパクトデジカメで可能になりました。裏面照射型CMOS搭載カメラにはこの高速連写を活かした機能があります。その中でも使用頻度が高いと思われるHDRと夜景合成、夜景ポートレート合成機能について紹介したいと思います。

HDR

 HDRというのはカメラの露出を変えて撮影した画像を合成することによって、ダイナミックレンジの広い画像を得ることです。これはどういうことかというと、カメラや人間の目というのは撮影できる明るさ、あるいは知覚できる明るさに上限と下限があります。これをダイナミックレンジといいます。人間の場合、ダイナミックレンジより明るいものはまぶしくて、暗いものは暗くて見えません。カメラの場合、ダイナミックレンジを超えて明るいものは単なる白に、暗いものは黒に写ります。人間に比べてカメラのダイナミックレンジは狭いです。そのため人間の目では見えている景色も写真に撮ると一部が真っ白になったり、真っ黒になったりします。いわゆる白とび、黒つぶれです。このようなことがよく起きるのは逆光の時です。逆光では背景が極端に明るいため背景に明るさをあわせると前景が真っ黒に写ります。他方で前景に明るさをあわせると背景が真っ白になってしまいます。これまではこのような状況を改善するには前景にストロボで光を当てるという方法が使われてきました。しっかりと調光できる光量の十分なストロボがあれば、これはかなり有効な改善策になります。とはいえコンパクトカメラの内蔵ストロボではうまくいかないことの方が多かったはずです。

 このような問題を解決するもう一つの方法として、背景に明るさをあわせて撮影した写真と、前景に明るさをあわせて撮影した写真を合成して一枚の写真にする方法があります。これをHDRといいます。したがってHDRは必ずしも裏面照射型CMOSを使わなくても撮影することができます。従来のCCDを使ったデジカメでも、銀塩フィルムでもHDRを撮影することは可能です。しかしHDR写真はまったく同じ場面を露出を変えながら撮影し合成するため、撮影する一枚一枚の写真を撮るときにカメラを固定しておく必要があります。また動く被写体を撮影することはできません。カメラが動いたり被写体が移動していると、写真をあとからうまく合成できない可能性があります。それゆえ、これまではHDR写真を撮るときには三脚でカメラをしっかり固定しておく必要がありました。

 しかし裏面照射型CMOSの超高速連射を使えば、手持ちのカメラがふらふらと移動するより高速に露出を変えた写真を2~3枚撮影することができます。じっさい裏面照射型CMOSを用いたHDR写真の撮影では、複数回シャッターがおりていることがまったく分かりません。それくらい高速に複数回の撮影がおこなわれているということです。移動する被写体の撮影にはまだ制約がありますが、窓の前にたった人や沈んでいく太陽をバックにしたビルなどを撮影にするには十分な性能です。裏面照射型CMOSによって、三脚なしで気軽にHDR写真を撮影できるようになったのです。

f:id:sn1nsmr:20110220111741j:image

夜景合成

 光の少ない夜景や薄暗い室内の撮影はカメラが苦手とする分野です。夜景や暗い室内で写真を撮影する主な方法はこれまでふたつありました。ひとつはシャッタスピードを遅くする方法です。この方法はノイズの少ない美しい夜景が撮影できるのですが、いかんせん8秒くらいシャッターが開いていたりするため、手持ちで撮影することは不可能でした。三脚とリモートレリーズを使って撮影するのが普通でしょう。また撮影対象が景色の場合、ストロボの光が届かないためストロボは使えません。手ぶれ補正もさすがに8秒もシャッターが開いていると役に立ちません。夜景や薄暗い室内を撮影するもう一つの方法は、感度を上げる方法です。この方法は撮影対象がそれほど暗くない場合は手持ちでの撮影が可能になります。しかし、コンパクトデジカメで美しく撮影できる感度はISO400がせいぜいです。夜景を手持ちで撮影できると感度となるとISO3200あたりでしょう。コンパクトデジカメでは設定することもできませんし、できたとしても画像はノイズまみれになるはずです。

 裏面照射型COMSでは高速で連写した写真を合成することで夜景を手持ちでノイズまみれになることなく撮影することができます。一枚一枚の写真は光量が不足していますが、それらを重ね合わせることで十分な光量が得られるようになる訳です。


夜景ポートレート

 夜景ポートレートとは、夜景を背景に人が前景にいる写真を撮ることです。夜景が綺麗に見える展望台とかにいくと撮影したくなりますよね。夜景ポートレートフィルムカメラの時代は撮影が非常に難しい写真でした。まず露出は背景の夜景にあわせます。すると8秒とか15秒とかのスローシャッターを切ることになるはずです。しかし、これでは前景の人がはっきりと写りません。下手をすると黒い人形のシルエットがうつるだけでおわってしまいます。そこでスローシャッターのシャッターが閉じるときにストロボを発光させて前景の人に光をあて写し込みます。これで夜景も人もくっきりと写った写真が撮れる訳です。しかし、この撮影はなかなか難易度が高いです。まず背景の夜景にぴったりの露出を設定することがひとくろうです。これをミスると背景が真っ暗になり夜景が写っていなかったり、露出オーバーで夜景の暗い中にイルミネーションが光る雰囲気がでなかったりします。さらにストロボの調光も難しく、これにミスると人が暗くなってしまったり、顔が真っ白に飛んでしまったりします。

 裏面照射型COMSでは背景の夜景に露出をあわせた写真と前景の人に露出をあわせた写真を高速で連写し合成することで、人も背景野両方に露出があった写真を撮影することができます。

 このような裏面照射型CMOSの機能を最大限活用したカメラを作り始めたメーカーはカシオでした。カシオのHi Speed EXILIMシリーズは高速連写を活かした静止画撮影機能や、一秒に120フレームのスローモーション動画を撮影することができます。裏面照射型CMOSの機能を最大限活用できるよう、HSボタンを押すと高速連写を活用した機能に一括してアクセスできるメニューが表示されます。その後、裏面照射型CMOSはほとんどのカメラメーカーに採用され、さらにiPhone4にも採用されました。HDR機能はiPhone4でも利用することができます。Nikonは裏面照射型COMSの高速連写を活用していることを意識しないインターフェイスの設計をしているようです。裏面照射型CMOSの高速連写機能はシーンモードと一体化しています。夜景を選択したときにはカメラが判断して自動的に高速連写が行われます。HDRだけは明示的に指定する形になっていて、シーンモードの逆光の時に利用することができます。また動画の撮影中にシャッターボタンをおすと静止画を撮影できるのも、裏面照射型CMOSの高速データ読み出しが可能だからです。

 というわけで裏面照射型CMOSの機能をしゃぶりつくしたいという方にはカシオのEX-ZR10 がおすすめです。上で述べた機能以外にも高速連写を利用して光学ズーム以上に焦点距離をのばしつつ、デジタルズームほど解像度を落とさない機能なども利用できます。またレンズの焦点距離も28mm-196mmと使いやすいです。ただこのEX-ZR10 、同じように考えている人が多いようで品不足かつほとんど値崩れがしていません。一方でCOOLPIX S8100はカメラとしても基本的な画質や光学式と電子式を併用した手ぶれ補正など暗所撮影機能が優れています。広角側の焦点距離は30mmと微妙にものたりないものとなっています。ただ露出補正のしやすさなどカメラの基本をしっかりと押さえた作りになっている点は好感が持てました。メニューもダイヤルで選択することになっているため、たいへんクイックな操作が可能です。そのうえ、独特の華のないプロモーションのおかげで注目が集まらず、値崩れを起こしているため販売開始価格の半額程度で購入可能です。

f:id:sn1nsmr:20110220133524j:image

f:id:sn1nsmr:20110220112531j:image

f:id:sn1nsmr:20110220133545j:image

f:id:sn1nsmr:20110220104846j:image