最近読んだ本

  • スタインベック / 怒りの葡萄 上・下
     スタインベックの代表的作品で、私がどうこう言うまでもなく名作。聖書のエピソードを連想させるさまざまなモチーフがちりばめられ、モダンな雰囲気とエピックな雰囲気が共存しています。
  • スタインベック / エデンの東 1~4
     個人的には『怒りの葡萄』より好きです。『怒りの葡萄』は作品全体読んだ時に、そのコンセプトのかっこよさがぐっとくる感じですが、『エデンの東』は部分部分でもかっこいい場面が目白押しです。個人的はアダムがケイト(キャシー)に弟からの遺産を届けに行く場面と賭博場に居合わせたせいでキャルが拘留された後、母親について知っていることをアダムに告げる場面のカッコよさはしびれます。「残念ながら人間は弱点ばかりだ…ここへやってくる男たちは、確かに醜さをむき出しにしてくるだろう。…だが、あの男たちだって、うちに善も美も秘めている。君にはそれが信じられない。君には一面しか見えず、だからそれしかないと思う。…世間には緑色の見えない人がいるが、見えないことがその人にはわからない。君はきっと人間の一部分でしかないのだと思う。君は目に見えないものを感じたことがあるだろうか。」「アロンには堪えられないと思う。耐えるには悪さがいるけど、アロンにはその悪さがない」ひとつひとつのフレーズの作り出す、透徹した人間観が強い印象を残します。そして、この物語は旧約聖書カインとアベルの物語のスタインベック流の再解釈でもあるんですが、そのなかで「ティムシェル」という言葉が重要なキーになります。この言葉について24章でリーが語る考察もこの作品を読み解くうえで重要なキーとなります。この謎解きのような部分もまた魅力的でした。