最近聞いた音楽

  • Beast In Black / Berserker
     これですよ。Battle Beastの新作はかなりつまらなかったんですが、やっぱりアントンが必要だったんですね。一番の違いはメタル好きのツボをわかっているかどうかという一点でしょう。Battle Beastの新作だって音楽自体はよく作りこまれているんですが、結局ポップミュージックとしてよくできているだけで、メタルファンがどこで心を熱くするのかがわかっていないんですよね。それに比べてBeast In Blackはビシーッっとストライクゾーンのど真ん中に来ますもんね。これだよ、これが欲しかったんだよと思わせてくれるのがほんとにすばらしいです。
  • Nocturnal Rites / Phenix
     ストロングなイメージと正統派メタルのメロディアスさが共存する音楽性はそのままで、ちょっとリフがヘヴィネス重視な方向にいった感じでしょうか。ただ、このバンドの魅力ってメロディセンスのよさですよね。それに関してはまったく以前と変わらないクオリティだと感じます。
  • Serenity / Lionheart
     かつてはKamelotフォロワーという感じだったんですが、新作では完全に別の道を歩み始めたことが確認できます。Kamelotは洗練していく過程で、雰囲気を重視していき、聴いてすぐにダイレクトに良さが分かるようなストレートなメロディーを抑制する方向に行ったわけですが、Serenityはむしろ逆にメタルらしいわかりやすいメロディーをふんだんに盛り込み、ダイレクトに利き手に訴えるような音楽を作る方向に来ました。その結果、彼らのアルバムの中で最高傑作といって間違いない仕上がりになっています。コンセプトアルバムなんですが、それもいい方向に働いていて、全体に統一的な流れと起伏があり、アルバムとして非常に一貫したイメージを作り出すことができています。
  • The Dark Element
     Night Wishをクビになったアネットの新しいプロジェクトなんですが、これが素晴らしい。はっきり言ってNight Wishより全然いい。Night Wishが雰囲気重視で行っている部分で、しっかりとメロディを作りこんできている感じがいいです。
  • Loudness / Rise To GloryB
     一時はマーケットのニーズとやりたい音楽のギャップがかなり深刻だったLoudenssですが、ここ数作はそのギャップが縮小してきている印象でした。新作は一気にマーケットのニーズにかなり寄せてきた感じです。で、こうなるとLoudnessの演奏技術の高さやこれまでの経験がかなりプラスになっていて、音楽的に紆余曲折あったのもむしろ強みになっているように感じます。ここしばらくのLoudnessで聞くことのできなかった明快なリフやメロディが連発されますが、じゃあ80年代そのままかというと、シンプルなリフの中にある生々しさや骨太で筋肉質な感じは、音楽的に多様な経験があればこそという感じがします。ギターも高崎晃といえばタッピングというイメージですが、新作ではオルタネイトの熱いフレーズがむしろハイライトになっている感じがします。
  • Butcher Babies / Lilith
     最初のころはどうもイロモノっぽい感じなのかなと思っていたんですが、これまでのアルバムを見てみるとけっこうちゃんとしてたんだなみたいな感じになってます(←失礼)。たしかにおっぱいにビニールテープはっただけの頃は見た目のインパクトが強すぎてちゃんと音楽を聴いてなかったのかもしれません。ただ、新作までいっかんしてグルーブ感のあるリフやゲテモノっぽいイメージのあるサウンド、澱んだアルペジオなど、音の面でもクオリティもしっかりしています。しかも、最近はこういう安っぽいアメリカンテイストをストレートに出してくるバンドも少なくなっちゃったなぁとも思います。しかもポイントポイントでけっこうメロディアスで、聞き手を突き放す要素と引き込む要素のバランスが絶妙ですよね。
  • In This Moment / Ritual
     なんかインタビューを読むと新作はオーガニックなイメージとか言っていて、インダストリアルメタルなのにオーガニックって何よそれと思っていたんですが、聴いてみるとそれほど違和感があるサウンドではありませんでした。まぁでも前作までのギラギラしたイメージの方が私は好きですけどね。曲のクオリティ自体は悪くないというか、いいんですが、前作のSick Like Meみたいなウネリまくりのヘヴィリフがほとんどなくなったのはちょっと残念ですね。
  • Judas Priest / Firepower
     まぁこれまでマイナスだったのが、ようやくプラマイゼロあたりまで戻してきた感じのアルバムですね。メタルの歴史に燦然と輝く彼らの過去のアルバムと比較すると見劣りしまくるのですが、まぁしょうがないですよね。

  • Angra / Omni
     う~ん、これはけっこう世間での評価は高いんでしょうね。前作よりサウンドがストレートになってメタルらしさがアップしていますが、個人的には前作のような音楽的な多様性を感じる作品の方がすきです。
  • August Burns Red / Phantom Anthem
     いつの間にかほとんどいなくなってしまったメタルコアバンドですが、August Burns Redは依然としてメタルコアをやっています。そしてそういうシーン全体の縮小はどこ吹く風という感じで、自分たちなりのクオリティを淡々と追及している感じがします。このバンドのサウンドはメタルが持つ泣きの哀愁みたいな要素よりも、不思議の国のアリスとかナルニア国物語とかのようなファンタジーっぽい雰囲気も感じるんですよね。初期の頃に比べて本腰を入れているイメージがあるというと、抽象的なんですが、ある種自分たちのやる音楽がしっかりと決まって、それを熟成させていく体制に入っているアルバムという感じですね。新鮮さと手慣れた感じのバランスも良く、安心して聴いていられるクオリティでした。
  • Annihilator / For the Demented
     Annihilatorはまぁスラッシュメタルなんでしょうけど、常に音楽的にどん欲に他のジャンル、特にメタルと相性があまりよくなさそうなジャンル(ファンクとかメロコアとか)の音楽を積極的に取り入れてきたバンドでした。が、新作はストレートなスラッシュ成分が少し多め・・・?ただ、やっぱりフツーにスラッシュを聞きたい人には、ちょっとお勧めできない内容かと思います。スラッシュならではのダークな雰囲気とかがぶち壊しになって、コミカルだったりする瞬間がありますからね。ただ、私はメタルがこういう他のジャンルのエッセンスを導入することが結構好きなのでなかなか楽しめました。スラッシュが好きな人向けというよりは、アナイアレイターが好きという人向けですよね。
  • Thousand Eyes / Day Of Salvation
     日本産メロデスバンドではありますが、十分にグローバルなマーケットで勝負できるサウンドだと思います。前作も十分にハイクオリティな作品ではありましたが、新作は緩急の付け方に磨きがかかっています。琴線に触れるツインのメロディがこれでもかと畳みかけてくるのは、これまでと一緒ですが、その畳みかけ方がより巧妙になり、圧倒的な完成度に到達しています。
  • Riot V / Armor Of Light
     Thundersteelの頃の雰囲気の曲が何曲か収録されているなど、勝負をかけてきたなと思わせる一枚でした。楽曲のクオリティは80年代のメタルが好きな人であれば、まず文句なしだと思います。ただ、ギターサウンドがいまいちですね。真空管っぽい温かみを重視したのかもしれませんが、音に鋭さが不足していてアルバム全体のテンションをさげてしまっています。一方でヴォーカルはすばらしく、Riot史上最高だったはずのトニー・ムーアを超えるパフォーマンスといっていいと思います。
  • Kamelot / The Shadow Theory
     一時期、Kamelotは音のクオリティや雰囲気は超一級のメジャーバンドを感じさせつつも、なんかイマイチなアルバムを作るバンドだったんですが、ロイ・カーンが抜けたあたりから再びとっつきやすいメロディーが復活してきて、雰囲気だけではない、クオリティが戻ってきたように思います。新作も耳に残るメロディと独特のウェットで情感豊かなヴォーカル、SFチックかつドラマ性のある世界観が素晴らしい作品でした。エンターテイメントでありながら、高い芸術性を感じさせる内容です。