最近読んだ本

  • 京極夏彦 / 絡新婦の理
    複雑に絡み合いつつ平行して進んでいくストーリー、これでもかとでてくる民俗学やオカルトについてのうんちく、戦後の混乱に翻弄されつつしぶとく生きている人々の人間模様、ダークでオカルティックな装いをまといつつ、背後には合理的で科学的な探求態度など、まさに京極ワールド全開で楽しませてもらいました。これだけ長い小説でありながら、一気に読ませてしまう痛快さはさすがとしかいえません。しかも長いくせに密度が超濃い。娯楽小説として一級品、フルコースの贅沢なディナーを楽しんだ後のような満足感があります。たとえば『姑獲鳥の夏』はなんか微妙なオチだなと思いましたが、この作品については最後の最後まで楽しんで、なおかつ冒頭を読むともう一度楽しめるという納得のつくりでした。
  • マツダユカ / ぢべたぐらし
    飛べない鳥を主人公にした漫画。筆者はかなり鳥という類がお気に入りのようで、なんども鳥は多種多様で種類ごとにキャラがたってていいみたいなことをいっていますが、それって筆者の鳥に対する愛情と想像力が生み出したものだと思うんですよね。その証拠に漫画に登場する鳥たちは、実にマイペースでちょっと間の抜けたようなパーソナリティがそれぞれに設定されていて、そのマイペースなキャラたちが作り出す、微妙な雰囲気がなんともコミカルで微笑ましい訳です。筆者の鳥へのこまなか観察力もすばらしいですし、私たちの日常に対する細かな観察力もすばらしいです。現時点で三冊出ているようですが、個人的には内二冊を占めている『あひるの生活編』がお気に入りです。