Mini Cooper(6AT)に試乗してきた

 Mini CooperのATモデルに試乗してきたので、その感想。まず乗り込むためにドアを開く訳ですが、ドアノブの作りもなかなかで取っ手の内側にレバーが隠されているような感じになっています。イントロダクションの時点からミニは他の車とは違うという感覚を感じます。ドアの開閉は重厚でしっかりした感触があります。そして座ってみると、シートは少し固めで後ろに行くに従ってけっこう深くなるようになっています。このシートは素晴らしいです。楽でなおかつ運転に集中できる、そんなシートだと感じました。そして計器類ですが、ハンドルの前には大きなタコメーターダッシュボードのセンターには大きなスピードメーターが配置されています。ダッシュボードのセンターに配置されたスピードメーターの下に視線をやるとパワーウインドウやシートヒーターなどのスイッチが集中配置されています。つまりパワーウインドウのスイッチはドアトリムにはありません。ドアトリムはとてもシンプルで立体的な造形になっています。配置されているスイッチはサイドミラーの収納と調節のためのもののみです。そのスイッチを大きく右にねじるとサイドミラーを格納でき、ミラーの微調整はスイッチをPSPのアナログスティックのような感じで操作します。バックミラーの周辺にはルームライト関連のスイッチが配置されているのですが、こちらも独特のデザインと操作です。インテリアはとにかく凝っています。これらの計器とスイッチの配置と操作体系、インテリアの質感からは高級感とオリジナリティ、若々しさを感じます。ただし、これらは微妙だなと感じる面もあります。たとえばダッシュボードセンターに配置されたスピードメーター、これは正直言って走行中に見ることはちょっと難しいです。Miniのデザイナーもその点には気づいていたようで、ハンドル前のタコメーターにデジタル表示でスピードが表示されます。ただし、スピードを直感的に把握できるのは、やはりアナログ式のメーターなわけです。特殊なスイッチの配置は、デザインを安全性より優先した結果のようにも感じます。走行中に使用しないルームライトなどはかまいませんが、走行中に使用するスピードメーターやパワーウインドウスイッチの配置はもう少しスタンダードでいいのではと思いました。しかし、ミニのオリジナリティはこれにとどまりません。エンジンをかけようと渡されたキーは不思議な円盤でした。どうみても車のキーに見えません。その円盤をダッシュボードにつっこんでプッシュ式のエンジンスタートボタンを押すとエンジンがかかります。このエンジン、かかったときの音は思いのほかスポーティーです。そしてまずクリープ走行、クリープ走行してみるとクリープ走行は遅くてパワフルな感じです。そのわりには段差などでは思いのほか強めにアクセルを踏んでやる必要があります。ところがエンジンは結構トルクフルなので、車はけっこうガツンと前に出ます。アクセルの加減をコントロールする必要があると感じました。車道に出るためにウインカーを出すわけですが、ここでもちょっとした驚きがあります。外車なのでウインカーとワイパーが逆なのは驚きではありません。驚いたのは、ウインカーレバーが2段階あり、しかも右折時は右折ポジションで、左折時は左折ポジションでレバーが止まらないことです。一般的なウインカーレバーの挙動は次のような感じです。右折する時はウインカーレバーを右折のポジションにいれます。するとウインカーランプが発光し、レバーは右折ポジションでとまったままになります。そして車が右折してハンドルを左に回すとレバーが解除されセンターポジションに移動、ウインカーランプの点滅が止まります。これがミニの場合はウインカーレバーが右折ポジションで止まらず、すぐにレバーがセンターポジションにもどってきます。さらに2段階になっていてウインカーを軽く操作すると3回だけウインカーランプが点滅します。しっかりウインカーレバーを操作するとウインカーランプはずっと点滅状態になります。ウインカーレバーは右折のポジションで止まらず、すぐにセンターポジションに帰ってきます。車が右折し、ハンドルを左に回す操作が発生するとウインカーランプの点滅が音もなく止まります。ウインカーランプの点滅が止まる時はウインカーレバーがセンターポジションにもどってくるカチャンという音があるのが当たり前になっていると、ウインカーランプの点滅がきちんととまったのか、けっこう不安を感じます。さらにウインカーレバーを2段階にする必然性にも疑問を感じます。ウインカーを出したつもりで3回しか点滅していなかったという状況はちょっと危険な感じがします。ここらへんも独特の操作感が優先された作りだなと感じました。

 さていよいよ公道に出ます。公道に出ると、流れに乗る必要がある訳でアクセルを踏みます。加速は特に鋭くありません。むしろまったりした感じですが、個人的には必要十分です。エンジンの回転数が上がる時の音は気持ちよく、ここらへんは素直にいいなぁと感じました。これがないのがCR-Zをスポーツカーと言えない最大のポイントだと思います。つまりCR-Zよりミニの方がスポーツカー的な感覚を私は感じます。しかし、このエンジンに欠点がない訳ではありません。どうもアクセルを踏むとエンジンの回転数が上がるのと同時にウィーンというようなモーターのような音が聴こえます。特にがつんと踏んだ時ではなく、クリープしつつのろのろとアクセルを踏んで行くようなときに目立ちます。隣に乗っていた営業の方に「これ何の音ですか?」と聞いたのですが、「車が次の操作の準備をしている音」というような曖昧な答えで、結局はっきりとはわかりませんでした。この音がちょっとネックだなと感じました。音がアクセルの踏み込み具合と連動していないため、どうも感覚的なズレが生じてドライブフィールをスポイルします。アクセルを踏んでいる以上に何かが回転しているようなそんな感覚です。せっかくいい感じで回るエンジンなのに、もったいないなぁと感じました。年末ということもあり、車が混んでいたのですぐに止まることになります。アクセルをオフにすると、エンジンブレーキが思った以上に強くかかります。さらにブレーキを踏むとかなりしっかりしたブレーキの感触です。ストロークCR-Zほど短くはありませんが、デミオよりは確実に短く、車体をしっかり押さえ込む感じです。つっかえ棒をたてるような挙動はみじんも感じさせません。車の価格の違いは車体のがっちり感とブレーキのできに顕著に現れるなと感じました。デミオの感覚のままブレーキを操作すると、急ブレーキになってしまうのはCR-Zと同様です。車が止まるとアイドリングストップは・・・しませんでした。なんとアイドリングストップMT車のみに設定され、AT車アイドリングストップしないそうです。これはけっこうがっかりなポイントのような・・・。そうこうしているうちにカーブにさしかかりました。ハンドリングはベストといっていいと思います。適度な重みもありつつ、自然な操舵感があります。回転角の設定も適切です。途中、雨が降ってきたのでワイパーを動かしました。ワイパーはちょっと音が大きいように感じます。唯一、ミニにのっていたなかで高級感を感じなかったポイントでしょうか。サスペンションは固めで、路面の状態をしっかり伝えてくる感じですが、慌ただしくギッコンばったんという感じではなく、どっしりとした感覚を欠くことはありません。個人的には好ましいチューニングに感じました。

 ディーラーに帰ってきてから後部座席に座らせてもらいました。後部座席も腰がぐっと沈むようなタイプのシートで、シート自体の作りはかなり素晴らしいです。天井も高く、上下方向には身長の低い私には十分なスペースがありました。しかし、前後のスペースは思いのほか狭い感じです。足を組むことはちょっと難しい感じで、前の座席が後ろにスライドされていると、足が前の座席との間に挟まったような感じになってしまいます。かといってトランクが広いのかというとさにあらず、奥行きは乏しいです。外から見ているほど車内空間はありません。

 ミニという車はコストパフォーマンスはよくありません。たとえばエンジンは1.6Lあります。あのサイズの車を動かすのに1.6Lのエンジンはけっこう大きいと思います。おそらく燃費も悪いというほどではないにせよ、格別よくはないでしょう。しかもガソリンはハイオクです。そしてそのエンジンサイズのわりに後部座席はそれほど快適な空間とはいえず、荷物もあまり載りません。ただし、デザインは素晴らしく、走りは重厚で、インテリアも高級感がありますが、オヤジくさくありません。高級車の感覚と若々しさが共存する独自の世界観をもっている車です。そこらへんの価値をどこまで積極的に評価できるか(金を払ってもいいと感じるか)が、この車の価値を決めるのではないかと感じました。