最近聴いた音楽

  • Born Of Osiris / Tomorrow We Die Alive
    このバンドはDjent系というくくりで紹介されることが多いように思うのですが、Djentっていうジャンルの分け方は主にリフのリズム面での特徴と多弦ギターを使用するという演奏面での特徴に対して与えられるジャンル分けの仕方なので、実際に聴いてみるとDjent系というひとつのくくりのなかでも、やっている音楽にはかなりの幅があるなぁという印象があります。このバンドの場合、多弦ギターの使用や特徴あるマシナリーなドラミングはFear Factoryあたりからの影響を強く感じますし、エスニックな(というよりエジプトっぽい)サウンドはNileあたりの影響を感じます。Djentというと教祖としてMeshuggahがあげられるわけですが、正直Meshuggahからの直接的な影響はあまり感じませんでした。ソリッドステートな歪みのギターとマシナリーなドラム、強烈にヘヴィでリズムにひねりのあるリフ、クリーンボイスの比率がかなり少なくグロウルで押し通すヴォーカルなど、個々の要素はかなりコアなんですが、これらの要素を組み合わせてトータルではかなりキャッチーなサウンドを作ってしまっているところがこのバンドの魅力だと思います。このキャッチーさの要因は、シンセのサウンドデザインはうまく練られているからだとおもいます。実際、スペーシーでエスニックなシンセのサウンドと残虐なリフとの組み合わせが非常にカッコいいです。ただ、バンドとしてはなんか音楽的に今の水準に満足しているというか、ひとつの落としどころを見つけたような感じになっているような感触があるんですよね。これだけ引き出しがあるんですから、もうちょっとバリエーション豊かで緩急のあるアルバムもつくれるんじゃないのかと思うんですがね。


  • Scale the Summit / The Migration
    プログレッシブインストバンドの4thですが、これがいい。瞬発間のあるリフと幻想的なサウンドが素晴らしい作品でした。特にサウンドのバリエーションが豊かで実に映像的、聴いていて飽きることのない展開が続きます。テクニカルなパートも、実にさりげなく曲の一部になっていてうっかりしているとすごいことが起きていることに、まったく気づかないくらいです。また"Evergreen"に典型的なディープで深みのあるサウンドは個性的だと思います。名作です。


  • Steve Reich / Works 1965-95
    iTunesで8,000円。高いですが、ライヒ作品の重要なところをひととおり網羅していると考えると、まぁこんなもんかなと。彼の音楽を聴いていると、彼が現代という時代の、特に都会での人々のパーソナリティを繊細な筆致で描き続けたのだと感じます。洗練された音像から都会の神経質でシステマティックな環境と、そこで生きる人々の洗練と孤独を感じます。音楽的にチャレンジングな内容ではありますが、気持ちよく聴くことができる音楽だと思います。
  • Protest The Hero / Volition
    Protest The Heroは、独特な歌唱ややたら動きまくるギターリフといった個性が強かったため、これまでは評価のポイントがそこに偏ってしまったきらいがあります。しかし、それ以上に彼らはそれら奇妙なエッセンスを使いこなし、質の高い音楽を生み出していたバンドなのだということを、この新作で改めて確認することができました。実際、4枚目でありながら、楽曲の質はまったく落ちることもなく、いつもどおりのてんやわんやです。それにしてもおもちゃ箱をひっくり返したように、あらゆるエッセンスがドバァーっと出てくる感じといい、落ち着きのないせっかちなリズムといい、とにかく楽しげです。メタルというジャンルにとどまらないロックが持つダイナミクス感じさせてくれるアルバムでした。