最近聴いた音楽

  • Kalmah / Seventh Swamphony
    ドラマティックな曲展開と、ロマン派のクラシックのストリングスパートのようなシンセのアレンジが曲の織り交ぜられています。しかし彼らの作品の特徴は、メロデスの多くのバンドが洗練と引き換えに失ってしまうアグレッションがこれでもかと堪能出来るところでしょう。個性的なギターのハーモニーや、高速なリズムに織り交ぜられる変拍子など彼らの個性が十分に発揮された作品でした。キャッチーなメロディーで分かりやすくつかんでくるタイプのバンドではありませんが、曲の構成自体が感動的で、ストリングスでぐっと抑えられた後にギターのツインリードが盛り上げると言った構築美にヤラれました。

  • Hibria / Silent Revenge
    Hibriaのすごいところはサードアルバムまでまるでデビュー作のようなハイテンションと溢れ出すクリエイティビティを感じさせてくれたところです。さすがに4thになると落ち着いてきて緩急をつけた表現をするようになりました。特にVoはレッドゾーンでアルバムの最初から最後までぶっつづけでシャウトしまくるようなスタイルではなくなりました。演奏自体も3rdはほんとに、各パートがつねにフルスロットルだったので聴く方も大変だったのですが、あきらかに音が整理されて曲構成やメロディ、各パートがなにをやっているのかを把握しやすくなっています。しかしそうして音が整理されてくると、彼らのシンプルでありながらヒキのあるメロディセンスがよりひきたつようになりました。音楽自体にはまったくマンネリ感はなく、フレッシュさが満ちています。プロダクションもシンプルで、オーバーダブも最小限でありながら、けっしてスカスカ感を感じさせないサウンドは彼らがライブでも高い実力を発揮する事を教えてくれます。昔ながらのストレートなヘヴィメタルを演奏するバンドでありながら、非常にソリッドでシャープな音像も彼らの個性でしょう。ひたすらカッコいい、そんなアルバムでした。

  • Black Sabbath /13
    こういうリユニオン系のアルバムは、基本的には昔の再現が目的な訳ですが、このアルバムにはそういった懐古趣味的な要素以上のものがあります。もっといえば現役感がハンパないです。だからといって今時のアルバムになっているわけではなく、ヘヴィメタルの歴史にその名を刻むバンドがもつすごみを、これでもかと楽曲から感じることができる作品になっています。実際、多くのリユニオンがちょっとしたお祭り騒ぎ以上のものにならない、悪い場合は単なる期待はずれで終わる事を考えると、この作品のクオリティの高さは驚くべきでしょう。禍々しくうねるギターリフはもちろんですが、独特のスイング感や、ポイントポイントでメジャーコードやテンポチェンジが用いられ、効果的に盛り上がる曲展開は過去の方向性を継承しつつ、過去を超えるニューアルバムを作ろうという意欲を感じることができます。実際、過去の名作に匹敵するというと言い過ぎにせよ、その延長線上にあるクオリティを感じることができる作品といえるでしょう。

  • Five FInger Death Punch /American Capitalism
    音楽的にはメタルコアとNuMetalのいいとこどりといった感じです。音楽からは非常にアメリカンなフレイバーを感じます。まぁ一言で言うと、下品でインパクト重視です。しかしその音楽はよく聴くと、なかなか質が高いです。たとえばヴォーカルの歌唱力はすばらしく、メロディーはキャッチーでありながらよく練られています。バックもテクを誇示するタイプではありませんが、安定した演奏を聴かせてくれます。しかし、そこらへんをウリにしても、けっきょくマジョリティはついてこないことを彼らは知って、下品で大味なアメリカンをねらって演じている感じがします。彼らからは結局、話題性とインパクトがあるバンドが売れるんだろというあきらめを感じるという意味で、いまだに高速ギターソロでテンションがあがる「音楽は質と演奏力こそ命」と思っているまじめなメタル好きは一抹の寂しさを覚えるというのが正直なところです。

  • Holy Grail / Ride The Void
    クラシックなヘヴィメタルを演奏するバンドのセカンドです。ヒブリアと比較するのもなんですが、Hibriaが現代のセンスでもカッコいいと思えるストレートなメタルを作ってくるのに対して、Holy Grailは現代のセンスではちょっとダサいかなと思える80年代の正統派メタルのエッセンスも含めて再現してしまうようなところがあります(これは同じアメリカ産の正統派メタルバンドであるWhite Wizzardもそうですよね)。しかし、そのB級フレイバーも含めてメタルの良さだと思っている人間にとっては、彼らの音楽は実に素晴らしいと感じられます。とはいえファーストと比べると、作風はモダンになっています。ファーストの焼き直し的な作品を期待している人にはちょっと期待はずれな面があったかもしれません。個人的には十分満足です。