最近聴いた音楽

  • Mors Principium Est / ...AND DEATH SAID LIVE
    前作の“LIBERATION = TERMINATION”と前々作の“THE UNBORN”があまりにすばらしいので、新作のレビューが難しすぎます。Mors Principium Estはジャンル分けするなら一応メロデスということになるのでしょうが、かなりオリジナリティのあるサウンドで、精緻で殺伐とした雰囲気のスピード感あるリフと、強烈なブラストビートによって、メロデスというには過剰なまでのアグレッションがあり、なおかつ時にギターが切なくもスペーシーなサウンドを奏で、プログレッシブかつドラマティックな曲展開により独自の世界を展開していました。しかし彼らの冷徹さと激烈なドラマ性が共存する世界は実に唯一無二のもので、しかも、3rdの“LIBERATION = TERMINATION”が出た時点で作曲の中心人物であったJori Haukio(ヨリ・ハウキオって読むみたいです。ちなみにバンド名はモルス・プリンシピアム・エストね。)が抜けたため「あー次作は期待できないな」と思いました。その期待できなかったはずの4thですが、うーむ。これまでのマシーンのような冷徹さに血が通ってきた感じがします。一応、表面的にはMors Principium Estの音楽のエッセンスであった強烈なブラストビートや、時にハモる高速リフ、壮大なキーボードアレンジなども残っているのですが、雰囲気的には普通のメロデスに接近しました。したがって表面的にはヨリ脱退の音楽的ダメージは思ったほど大きくもなかったように感じます。これはメンバーの中にMors Principium Estの音楽のあるべき姿がしっかり共有されていたからこそでしょうが、頭の中でイメージできても実際にそれを具現化できるかは別問題で、彼らが挑んだその難事業の成果には悪くない評価を与えることができると思います。ただやはりこれまでのアルバムは、自然と湧き出てくるものを形にしたクリエイティブな空気とスリリングな緊張感に満ちていたのに対して、新作はどことなく既存のボキャブラリーを組み合わせて再生産された作品であることが感じられます。メンバーも冷静に自分たちのやっていることを分析している感じと言うか。こんな風に書くとまるで新作がイマイチであるかのように聞こえるかもしれないのですが、それは誤解で新作はほかのメロデスやメタルのアルバムとおなじ尺度ではかることのできるラインに入ってきた感じがするというのが正確な表現なような気がします。これまでの彼らのアルバムは、オリジナリティの高さ故、まさに孤高の存在というような感じがして、絶賛する以外にすべがないというか、聴いた瞬間その世界に引き込まれもはや評価することなどできないような作品でした。それに比べると新作はまだああだこうだと評価することができる普通の作品と感じます。ある種、普通のメタルのアルバムとして名作といえるのが新作なのではないでしょうか。あと不満なのはこの人たちはCDが高い。輸入盤でも高い。iTunesが1,500円で一番安かったのでiTunesで買いました。
  • Sevendust / Black Out The Sun
    コンスタントにアルバムを作り、アルバムのクオリティにもブレがなく、方向性も一貫しているということで、新作もその延長線上にあります。ただ彼らの場合、ソウルフルなヴォーカルやグルーブするリフ、よどみのある音像など、そもそもの音楽の方向性があまり日本人の好みにマッチしていないのでどうも日本マーケットでは評価が低いです。さらにジャンル的にはもはや時代遅れのNuMetalに分類される訳で、欧米でもやっぱり評価は低いのか。ただコンスタントに一定上のクオリティの作品を作っていることはもっと評価されるべきだし、そのクオリティもかなり高いラインが設定されている訳です。そう考えるある意味安心のブランドなわけですが、たしかに注目すべきポイントみたいなのには、ちょっとかけるのも事実なんですよね。一定のクオリティのものを確実に出してくるという信頼感は、ビジネスパートナーには必要なものだと思うんですが、ロックバンドだと逆効果なんですかね。