最近聴いた音楽

  • Periphery / Juggernaut: Alpha  Juggernaut: Omega
     これまでのPeripheryは、プログレ的な要素よりDjentの要素が強く出ていた感じだったんですが、新作では音楽的な挑戦という意味でプログレッシブな要素を強く感じます。彼らの場合、プログレと言ってもOpethのような70年代っぽい感じではなく、変拍子やテンションコード、モーダルなコード進行などを積極的に取り入れたモダンなプログレエッセンスです。最初のA Black Minuteでモチーフとなるメロディーが提示されるわけですが、そのメロディーはコード進行とアレンジを変えてThe SourgeやRepriseに登場します。とくにThe Sourgeのコード進行はテンション感があふれていて、かっこよすぎです。また破壊的なリフでカオティックな演奏がなされる箇所とテンションコードを多用したフュージョン的な箇所がモザイクのように組み合わされているのですが、その曲調が変化する瞬間がめちゃくちゃカッコいい。Hell BellowからOmegaへの流れは、そのカッコよさが全開です。聴いていて「こう来るか!」と思わせてくれます。またカオティックなパートではDjent要素を聴くことができます。アクセントがずれていくリフなど、トリッキーなリズムアレンジが多用されています。またメタル的な勇壮さや哀愁ではなく、都会的で洗練されたメロディーや、不安定で温かみのあるメロディーなど、多彩なメロディーが印象に残ります。聴けば聴くほど深みのあるアーティスティックでプログレッシブな作品でした。

  • O' Funk'illo / 5mentario
     レッチリスティーヴィー・サラスあたりを彷彿させるファンキーなロックでたぶん歌詞はスペイン語。特にサラスのカラーコードは最初の頃、こんなサウンドだったなぁと思います。ひたすらカッコいいサウンドでベースが縦横無尽にスラップしまくります。ギターも時にディストーションサウンドとクリーンのカッティングを駆使して迎え撃つのですが、基本ベースが活躍しまくる音楽です。サラスとかだと、ここでギターにオートワウなどをかけてビョンビョンいわしたりするのですが、ギターのプレイは比較的オーソドックスです。ドラムのグルーブはもうちょい強力なのが欲しいなぁ。昔はもうちょいお行儀のいい感じのファンクだったみたいなのですが、この作品はロック色が強いうえ、キャッチーなメロディーも多く、ノリノリです。アホっぽいサウンドですが、演奏はかなりハイレベルで、ラテンのノリとファンクサウンドが絶妙にマッチしていて、カッコよすぎです。


  • Blind Gurdian / Beyond The Red Mirror
     指輪物語などのファンタジー小説の世界観をベースにした壮大でドラマチックなサウンドを彼らは追及してきました。新作もその方向性は堅持されていますが、彼らの場合、壮大さが音楽に占める割合が高まり、メタル的なスピード感やパワー感が一作ごとに後退してきました。そして、新作もその方向です。Blind Guradinにスピードを求めているファンは少なくないので、この方向性自体に賛否両論があることは理解できますが、新作の安定感と質の高さを考えると、彼らが実際に採用した方向性も十分に魅力的なものだったのだということが理解できます。ファンタジー小説にはお笑い担当のホビットなども登場することを踏まえたのかは、わかりませんが、時にコミカルなエッセンスも感じさせるメロディーもあり、作品のイメージがしっかりとコントロールされていることを感じます。彼らがキャリアの中で積み上げてきたものを感じることができる作品でした。

  • The Agonist / Eye of Providence
     アリッサがArch Enemyに行ってしまった後の1作目。これがイマイチだと「あーぁ」となってしまうのですが、個人的には安心しました。まぁLullabies for the Dormant Mindは、かなりいい作品だったので、それを超えかというとう~ん、微妙です。ただ、新作はある種、非常に練られた作品で、Lullabies for the Dormant Mindのようなケミストリーによって自然とクオリティが高まったというよりは、作為的にコントロールされたクオリティを感じます。したがって次作以降も、このクオリティは期待できると感じました。たとえば、これまでのクリーンボイス部分の気だるい感じは、そのまま残っていますが、アリッサの場合、彼女自身の歌い方によって自然とそうなっていたように感じます。しかし、ヴィッキーは意図的にそういう歌い方をしているように感じます。また歌詞やメロディーのミステリアスな雰囲気も継承されていますが、これまで以上にそういう雰囲気を強調する部分と、ストレートにメロディーやグロウルをきかせる部分のメリハリがつけられている感じがしました。その結果、作品トータルで安定したクオリティが実現し、曲によるクオリティの上下が少なくなったように思います。ちょっと気になるのは、ヴィッキーの存在感がもうひとつ薄いことですが、ただ、それも一概に悪いのかというと微妙で、これまでのThe Agonistはアリッサが目立ち過ぎていたせいで、ギターやドラムがかなり質の高い演奏をしているにもかかわらず、キャラがたたないという問題があったように思います。極端にいえばアリッサとバックバンドみたいな聴こえ方をしていました。ヴィッキーになってからは、バンドとして一体感はしっかりでてきたと思います。個人的にはこのパワーバランスの方が好きですが、世間的なキャッチーさに欠ける部分でセールス的にはきびしいかもしれませんね。