最近読んだ本

  • 松波 成行 / 国道の謎
     下で紹介した国道本よりはハードな印象。「こんな道があるよ~」で済ますのではなく、「公道とは何か」「道路行政はどうあるべきか」といった考察までされています。特に明治国道が勧業を目的に整備されていたのに、山形有朋が責任者になってからは国防が目的に変わったというあたりの記述は「なるほどな~」と思いました。
  • 佐藤 健太郎 / ふしぎな国道
     酷道ずきだと読んで「知ってるよ」と言いたくなるところも多いわけですが、むしろそういう情報を一冊の本としてまとめて必要な時には、ぱっと調べられるようにしたところが魅力だと思います。地図をみながら読むと楽しさが1.5倍ですよ。
  • バート・M. パーシグ / 禅とオートバイ修理技術 上・下
     オートバイ修理技術を通して科学技術とどう接していくべきかとか、認識論の諸問題、二元論の問題など哲学的な問題について考察をめぐらすという実にチャレンジングな作品。作中に出てくるパイドロスというのは、プラトンの対話編のパイドロスではなく、とりあえずは著者が記憶喪失になる前の人格のことをさしているわけですが、究極的にはこの本は価値一元論というような存在論パイドロスが到達していくプロセスが、断片を組み合わさるようにしてたどられます。哲学書としてみると、既存の哲学上の立場とかジャンル分けとか、問題の整理方法(たとえば「存在論では私は○○主義をとる」とか「○○主義との違いは実在の基準をプラグマティックな点においている点にあるなど)を重視していないという点で、非常にオリジナル。まぁあえて分類するとすれば価値一元論とでもいうような存在論ということになるんですかね。素晴らしいことは否定しませんが、とはいえハイブロウなこの作品が売れまくったというのはにわかには信じがたいですね。
  • 村上春樹 / 辺境・近境
     旅の中で感じる細かな情感がうまく表現されています。また取材に至る裏の事情などもよくわかるあたりもなかなか素晴らしいです。けっこううまくいっていない旅の記述のほうが読んでいて惹かれますね。無人島とか。
  • 宮竹 貴久 / 「先送り」は生物学的に正しい 究極の生き残る技術
     生物学の話は面白いんですが、それをむりやりライフハック的なネタに結びつけるところがしんどいな~