最近聴いた音楽

  • Firewind / Few Against Many
    最近はかなりレアになりつつある無印のヘヴィメタルメロスピでもなければ、デスなんとかでもない細分化されない素のメタルを聴かせてくれるバンドFirewindの新作です。Iron MaidenとかJudas Priestからメタルに入った人は一番連続性を感じる音じゃないでしょうか。最近、テクニカルなメタルにありがちなガチガチにタイトな演奏ではなく、適度にこなれた演奏で曲もシンプルです。そういうシンプルかつストレートアヘッドなメタルはやりつくされた感があり、音楽の質は高いけどネタもとがバレバレで演奏もマンネリズムを感じさせるテンションの低いものになりがちです。そして、多くのバンドはその袋小路から抜け出すためにプログレッシブになってみたりシンフォニックになってみたり、デスになってみたりして素のメタルから足を洗うという展開を見せます。しかし、Firewindは数少ない新鮮さを感じさせる素のメタルを作り続けているところがウリだとおもいます。とはいえ、プログレッシブエッセンスやシンフォニックエッセンスという化学調味料でドーピングされたメタルに慣れていると、いかにもFirewindのサウンドインパクに欠けるものに聴こえるのも事実で、なかなか難しいものです。新作もクオリティの高い楽曲、こなれていながら一体感のあるフレッシュな演奏など悪いところはありません。しかし、ここぞという聞き所でこれでもかという分かりやすい派手な演出がないのでうっかりしているとスーっと音楽が流れていってしまいます。素材のよさを楽しめるひと向きです。

  • Deadlock /Bizarro World
    なんかアルバムのなかのメロウな要素が増えてしまって、煮え切らない音になってしまったなぁという印象です。こうして3枚ほどアルバムを聴いてみて感じたのは、ちょっと女性ヴォーカルが弱いなぁということです。これは実はサビーネが加入した時すでに言われていたんですが、私はそれほど感じなかったんですね。むしろ『Wolves』の時はヘヴィなリフとグロウルの間から突き抜けてくるような印象の女性ヴォーカルはかっこいいなと感じました。しかしHalestormなどでメタル女性ヴォーカルかくあるべしというような歌を聴いてしまうと、サビーネの歌は抑揚もパンチもないなぁと言わざると得ません。イントロではザクザクとカッコいいリフが刻まれていても、サビになると曲のテンポが落ちてバッキングがクリーントーンアルペジオになってしまいます。そして、そういうパートの分量がアルバムを通して大幅に増えてしまったので、アルバム全体の印象はなんだかスッキリしないものになっています。ドラムの音とかはすごい好きなんだけどなぁ。サビーネをクビにしてキンバリー・ゴスを加入させるとかしてみたらいかがでしょうか。ムリか。

  • God Forbid / Equilibrium
    God Forbidは有象無象のメタルコアバンドが溢れかえった時期のOne of Themです。大局的に見て、In Flamesの前座などをしてはいたものの彼らは比較的ザコグループに埋もれてしまったクチではないかと思うのですが、個人的にはメタルコアのなかでメロディセンスが好みなバンドでした。新作もこれまでの作品から大きな進歩があるわけではありませんが、個人的には非常に気に入りました。あえてこれまでの作品との違いを挙げるならば、新作はこれまでの作品に比べ曲ごとのクオリティのムラが少ないです。これまでの作品は最初聴いたときに思わずガッツポーズをしてしまうようなドツボの曲があるかと思うと、ポイントはどこですかと尋ねたくなるような曲もあったという感じでした。新作は曲の聴き所がどの曲にも用意されていて、アルバムを通して一定のテンションで聴くことができます。その分、こりゃすげぇという突出した曲がないのも事実ですが、トータルでのクオリティは上がっていると感じました。まぁコンスタントにアルバムを作るには、こういう作風の方がいいんじゃないでしょうか。

  • Fear Factory / The Industrialist
    Fear Factoryをインダストリアルとかのサブジャンルに分類している雑誌とかレコードショップがあるわけですが、そういうのを見るとホントにジャンル分けって無意味だなぁと感じます(もちろん分類する側の事情はよくわかるんですが)。実際、これまでの作品を聴いてきた人間からしてみるとFear FactoryはFear Factory以外のなにものでもありません。どっかのサブジャンルに分類したところで、そのサブジャンルを構成する凡百のバンドどもとは比べ物にならないクオリティの作品を継続的に作ってきている訳です。新作も音づくりからリフに至るまで一分の隙すらない作品です。アルバムを再生して1秒たらずで殺伐としたFear Factoryの世界に叩き込まれます。というかFear Factoryがそういう部分でミスることがまったく想定できません。演奏もこれまでどおり超タイト。ドラムの音もドラムマシーンを使ったことは言われなきゃわからないレベルです。サビのメロディは聴き所じゃないので置いておくとして、ドラムと完全にシンクロするリフの気持ちよさは研ぎすまされまくっています。この安心感、安定感。期待を決して裏切らないハイクオリティの作品でした。